一瞬、風の匂いが変わった気がした。
風上を振り向くと、頭に布を巻いて肌が少し日に焼けた男が立っていた。
江戸の風鈴師「鈴木フウリン」さんと日本の風鈴について見ていきましょう。
風鈴の歴史は2000年前の古代中国の占い道具「占風鐸(センフウタク)」が起源で、6世紀頃に仏教とともに日本へ伝来しました。当初は寺院の魔除けとして使用され、平安時代に貴族文化へと浸透します。
江戸時代中期、オランダから伝わったガラス技術が風鈴に革命をもたらします。
高価な「風琴」として大名や豪商に愛され、やがて庶民にも普及。風鈴売りの呼び声が夏の街に響き、川開きや蛍狩りとともに季節を彩る音の芸術として発展しました。
代表的な風鈴には、江戸風鈴、南部風鈴、小田原風鈴があります。
江戸風鈴は「宙吹き」技法による繊細な音色と絵付け、南部風鈴は400年の歴史を持つ南部鉄器が織りなす澄んだ音色、小田原風鈴は多様な形状と砂張合金の独特な音色が特徴的です。
「夜中によ、風鈴ぶら下げた蕎麦屋が来るんだよ。それうちの風鈴じゃねえかっつってよ。あの蕎麦が美味いんだよな」
フウリンさんは当時の屋台、風鈴蕎麦の話をしているようです。
風鈴の音色には科学的な効果もあります。「1/fゆらぎ」という特性が脳にα波を誘発し、リラックス効果や創造性向上をもたらします。
さらに、体感温度を2-3℃下げる研究結果も報告されており、夏を快適に過ごす音の力が再評価されています。
風鈴は風通しを重視する日本建築との相性が良く、軒先に吊るす文化が定着しました。
視覚と聴覚で涼を演出し、現代では伝統技法と新素材を融合したアート作品として愛される日本の夏の象徴にもなっています。
「風鈴の音は涼しくていいけどよ、作ってるときは暑くってかなわねえぜ。ガハハ」
いい風が吹いた