竹細工

文化

日本の山里に立つと、そこには必ずと言っていいほど竹林が息づいています。
竹から生まれる工芸品、竹細工は日本の美意識と技が結晶した芸術とも呼べる存在です。
江戸期の竹細工職人「千野タケ」さんと共に日本の竹について見ていきましょう。

竹細工はとても軽いです。しかしその軽さとは裏腹に竹細工は驚くほどの強度を持っています。
繊細な編み目を指でなぞると、まるで竹林の中を歩いているかのような感覚に包まれます。
そこには職人の息遣いと何百年もの歴史が刻まれているのです。

古い民家に置かれた竹かごを見たことがあるでしょうか。
使い込まれた竹かごは艶やかな飴色に変化し、磨かれたかのような美しさを放ちます。
プラスチックや金属では決して真似できない、生きた素材ならではの魅力と言えます。

代表的な竹製品には、籠、ざる、弁当箱、花籠、茶道具、簾、家具、建築材料などがあります。
竹の種類も色々とあり、特徴が違うので用途に合わせて使い分けています。
・真竹:しなやかで加工しやすい。主に建築材料や茶道具用。
・孟宗竹:太くて肉厚。強度があるから建築用材に向き。
・淡竹:繊維が細くて柔らかい。籠やざるの材料に合う。
・篠竹:細くて弾力がある。編み込み部分に使う。
・黒竹:黒っぽい色が特徴。高級品。
・根曲竹:東北地方の名物。根元が曲がってるのが特徴。
・鈴竹:節と節の間が短い。釣竿や籠の材料になる。

竹製の道具は縄文時代の遺跡からも出土しており、日本人と竹との関係が太古の昔から始まっていたことを物語っています。
平安時代には優雅な貴族の暮らしに欠かせない茶道具として愛され、江戸時代には庶民の生活を彩る日用品として広く普及します。
時代とともに形を変えながらも、竹細工は常に日本人の暮らしに寄り添い続けてきました。

竹細工の製作過程を見ると、そこには驚くほどの手間と技が詰まっています。
1.まず、竹を切る。3〜4年育った竹がちょうどいい。
2.切った竹は乾燥させる。自然乾燥。
3.火であぶって油を抜く。虫やカビに強くなる。
4.用途に合わせて割ったり削ったり曲げる。
5.籠やざるを作るなら竹ひごを編んでいく。
6.最後に形を整えて仕上げる。

「竹は生きておる。切り出す時期を間違えりゃ、良い細工は望めぬぞ」
タケさんは言います。

代表的な編み方には、六つ目編み、四つ目編み、網代編みがありどれも美しいです。
竹を割り、削り、編む。
機械化が進んだ現代でも最後の仕上げには必ず職人の手が入ります。
その瞬間、無機質だった竹は魂を宿した工芸品へと生まれ変わります。
竹細工の魅力はその美しさだけではなく、長い歴史と職人たちの情熱が込められています。

このような素晴らしい伝統も、現代社会の中では苦境に立たされています。
需要の減少、後継者不足、原材料の供給問題。
竹細工を取り巻く環境は決して楽観できるものではありません。

「わしの時代はこの辺りの山全体が良質な竹林だったな。今ではいい竹を見つけるのも一苦労と聞いておる」
都市化や環境の変化によって良質な竹の入手が難しくなっています。
そして、その竹を加工する職人も年々減少しています。

このような逆境の中でも、若手デザイナーとのコラボレーションによる斬新な製品開発、竹の特性を活かした環境にやさしい代替製品の提案など、竹細工は新たな可能性を模索し続けています。
伝統を守りながらも時代のニーズに応える柔軟な姿勢が竹細工の新たな魅力を生み出しています。

落ち着いた趣があり、背面に「一曲」と千利休の判とされるいわゆるケラ判がある。千利休が天正18年(1590)に伊豆韮山(にらやま)で「園城寺(おんじょうじ)」などの竹花入を切り出した逸話が象徴するように、茶人により切り出された竹花入は重要な役割を果たすものとなっていった。 作品名 竹尺八花入 銘 一曲 作品名かな たけしゃくはちはないれ めいいっきょく 種別 工芸:芸能・芸道:茶道具 員数 1口 作者 伝千利休作 時代世紀 安土桃山時代・16世紀 品質形状 竹製