煎餅

カリッ、サクッ、パリッ。

堅焼き煎餅の力強い「バリッ」という音、薄焼き煎餅の軽やかな「サクサク」
煎餅を口にした瞬間、そのテクスチャーが奏でる音の饗宴が始まります。

今回はお煎餅の魅力に付いて、自称せんべいソムリエの「海苔巻センベイ」さんと見ていきましょう。

焼きたての煎餅から立ち昇る香ばしい匂いは、思わず目を閉じたくなるほどの魅力があります。
醤油の香りに包まれた海苔煎餅、ほのかな甘さが漂うざらめ煎餅。
それぞれが独特の香りを放ち、私たちの嗅覚を刺激します。

味わいも実に多彩です。醤油の塩味、ざらめの甘み、海苔の旨味。
各地の特産品を使ったご当地煎餅は、その土地の風土をも味わわせてくれます。
福岡のめんべいで明太子の刺激的な味わいを、愛知のえびせんべいでサクッとした軽い食感と海の香りを楽しむ。
煎餅は、まさに日本全国の味めぐりを可能にしてくれるのです。

「煎餅は季節ごとの味わいを楽しめるのも魅力だね。春は桜味、夏は抹茶味、秋は栗味、冬はしょうゆ味って具合に」
センベイさんが季節ごとの楽しみ方を教えてくれます。

煎餅の魅力はその味わいだけにとどまりません。
遠く中国から伝来し、日本の風土に根付いた煎餅。
江戸時代には庶民の間で広く親しまれるようになりました。
当時の人々は煎餅を囲炉裏で焼きながら、家族や友人と語らいの時間を過ごしたことでしょう。
その光景は、日本人の心に深く刻まれた原風景とも言えるのではないでしょうか。

煎餅は日本の文学作品にも度々登場します。
夏目漱石の「吾輩は猫である」では、主人公が煎餅を食べる場面が描かれています。
こうした描写は、煎餅が日本人の日常生活に深く根付いていたことを物語っています。

また、煎餅は日本の伝統行事とも密接に結びついており、雛祭りの菱餅型の煎餅、結婚式の紅白煎餅は、煎餅が単なる食べ物を超えて日本の文化や慣習を表現する媒体となっていることを示しています。

近年では健康志向の高まりを受けて、玄米や雑穀を使った栄養価の高い煎餅が登場しています。他にも、減塩タイプの煎餅も人気を集めています。

さらに煎餅は新しい楽しみ方を提案し続けています。
せんべいピザ、せんべいチャーハン、せんべいアイス。
これらのアレンジレシピは煎餅の可能性を大きく広げていて、伝統的な和菓子としての煎餅が洋風のアレンジによって新たな魅力を獲得しています。
外国人の好みに合わせた新しいフレーバーの開発も進んでおり、煎餅は日本の食文化を世界に発信する重要な使者となっているのです。

「煎餅はどんな飲み物とも相性がいい。お茶はもちろん、ワインやビールにも合うんだ。ワインを飲むならドライフルーツとクリームチーズを添えた煎餅、ビールのお供にはマヨネーズと七味唐辛子をかけた南部せんべいがおすすめ。これぞ大人の味だね」
センベイさんが美味しそうな煎餅レシピを教えてくれました。

煎餅はまさに味わいの宝庫です。
その多様さと奥深さは、探れば探るほど新たな発見をもたらしてくれます。

せんべい職人男性1人。煎餅。 メタデータ 登録番号 TS-P-007-002-00 タイトル 煎餅職人 コレクション 高橋捨松 エリア 南魚沼市六日町 年代 大正時代(1912~1925年) メディア 写真 年 1912